活字の海で溺れてます

本とは出会い...

55歳からのハローライフ

ずっとむかし、どこまでも自転車に乗っていったころ、おとずれたことのある駅をふと思いだした。確かこの道だったよな。遠い記憶をたどりつつたずねてみた。まったく変わってしまって自転車駐輪所だったと思われるところはコンビニになっていた。その隣「明和書店」になんの気なしに足を踏み入れた。ぱらぱらと雑誌をめくり、漫画を読んだ。中学生の頃の近所の本屋を思い出した。昔から本屋の立ち読みは大好きだ。昔の本屋は小さかったが、本棚は高く、店ごとに本も違ったような気がする。別の本屋に行くというのはかなりワクワクしたものだ。最近の本屋はどこも大きい。立ち読みしてる人もたくさんいる。多すぎて手に負えない感が強い。ついついおすすめのところにいっておすすめの本を手にとってしまいがちだ。そんなことを考えながらそろそろ出るかと歩き出した時にチラッと視界のすみにタイトルが飛び込んだ。「ハローワーク」?失業の話か。最近まで失業中だったので他人ごととは思えず手にとって見た。村上龍か、「男は消耗品である」とかあったな、なんか気取っててキライなんだが、時に読みたくなる不思議な作家だ。

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ハローワーク」ではなかった、「ハローライフ」だ。パラパラのめくると早期退職の話があった。58歳からの再就職は絶望的に難しいとかを読んで、少し迷ったが、久しぶりに村上龍読んでみよう、とレジに向かった。

読んでみると5つの短篇からできていた。私は本をよく途中から読み出す癖がある。とばして核心部のいいところを読んでは前に戻る。結末を読んでから、出だしに戻る。など友人からはあきれられる読み方をしている。さっそく中高年の再就職話から読んでみた。タイトルは「キャンピングカー」。早期退職した中間管理職が、妻とキャンピングカーで全国をまわることをもくろんであっさり断られる話。最近離婚した私には身に突き刺さる展開だ。慕われてると思っていた妻に、バッサリ真っ二つだ。うーん、私なら怒るだろうなと思いながら、でもそんなものか、女性なんか。男の幻想だな。うん、うん。話の主題はそこではなく、本当に大切な人に固有の時間があることをはじめて知ったときに人は動揺する、ということだった。なんのこっちゃ、だが、子供が大人になるのに自己同一性を確立するのに似てるのかな。こんなに近い、身も心も同じ、と思っていても突き詰めると他人なのだという現実を突きつけられると、自分の存在が不安になる、ということなのかな。ふむふむ、深いな。しかしベストは次だった。「空飛ぶ夢をもう一度」。私もよく空飛ぶ夢を見る。いつも落ちていく夢だ。車に乗っている時もあるし、飛行機の時も、ダイビングしている時もある。これは飛ぶのではなく落ちる夢か、、、、。中学時代の同級生に40年ぶりくらいに会ったが、日雇いで病気に冒されていた。最後に母親のもとへ連れて行くのだが、最後の手紙が本当に泣ける。

でも、おれは素晴らしい友人に恵まれた、それだけで生きた甲斐があった。

 なんだ、これだけ?と思うだろう。じゃあ、読んでみて。男性ならわかるから。「男はタフでなければ生きていけない、やさしくなければ生きていく資格がない」、野性の証明だったかな、こんなセリフを思い出した。はて私は生きていけるのか、、、女のひとは?うーん、どうなんだろ、なにそれって感じかな、多分。アディオス!